テイクアウトとイートインで、現代NYを満喫する"The Burn"
サスティナブル・グリルレストランを謳う青山の「The Burn」は、その名前の通り、火の味がする炭火焼きの肉料理が評判の店だ。すべて国産牛のドライエイジングビーフを使い、特に経産黒毛和牛のステーキやハンバーグは人気が高い。
しかし、「The Burn」を率いる米澤(文雄)シェフにはもう一つの顔がある。生産者から届く有機野菜を使用した、様々な野菜料理のバラエティだ。その背景には、米澤シェフがNYで学んだベジタリアン料理のレストラン「abcV」の存在がある。
三つ星シェフのジャン・ジョルジュがプロデュースする「abcV」は、ベジタリアン料理のレストランでありながら100席以上ある客席が常に満員になる超人気レストランだ。肉や魚の代用品ではない、野菜の真のおいしさと驚きを与えたジャン・ジョルジュのレストランで、日本人初のスー・シェフを務めたのが米澤シェフ。ジャン・ジョルジュの日本進出時には料理長に抜擢された。
帰国後、ヴィーガン料理のレシピ本も執筆した米澤シェフは、「The Burn」でもヴィーガンのコースを設けるほど、野菜料理には力を注いでいる。その特徴は、なんと言ってもおいしくて綺麗なことだ。ベジタリアンよりもさらに厳格なヴィーガン料理は、卵や乳製品、蜂蜜やゼラチンさえ使わない。
その本場、NYで修行したシェフにとって、健康やダイエットのために今注目される植物由来のプラントベース料理はもはや十八番。牛乳の代わりにコクを出すためにアーモンドミルクを使ったという、「三崎キャベツのロースト」を食べて驚いた。
店の主役とも言える炭火でじっくりと焼かれたキャベツは、甘い香りとうまみが口いっぱいに広がって、単に野菜を食べているという以上の満足感に包まれる。アーモンドミルクとレモンのソースに抱かれたキャベツのアクセントは、ディルと炒り胡麻、そして同じく胡麻由来のタヒニソース。
タヒニソースは和食の練り胡麻、中華の芝麻醬を思わせるソース。胡麻から作られる中東の伝統的な調味料だ。この辺りからも、中東や南米などあらゆる食文化がメランジェしたNYで学んだ、シェフの技の深さが伺われる。
青山一丁目の地下鉄から直結した「The Burn」はお昼時、たくさんのランチ客が訪れる。人気のハンバーグを贅沢に挟んだハンバーガーは、イートイン、テイクアウト共に人気が高い。5月30日に制定された「アーモンドの日」に合わせて米澤シェフが考案したアーモンドミルクを使用したオリジナルメニューの人気も高い。そのほか、パスタや経産牛を使用したカレーなど、久しぶりにメニューを見ながらあれやこれやと悩むひと時は、コロナ禍の空虚感を忘れさせる至福だ。
もちろん、お昼にも大豆を使用したゼロミートを中心に、シェフ得意の有機ケールを使ったサラダなどを配した美しいヴィーガンプレートも用意されている。夜はNYの最先端の食を体現するコースが用意され、肉と野菜、その両方のおいしさを満喫できる。
米澤シェフならではの、ヴィーガンコースが用意されているのも見逃せない。中東やアジア、インド、南米、あらゆる文化のスパイスを駆使して、野菜本来の味を引き出す手腕は、ベジタリアンやヴィーガンでない人々にこそ味わってほしい衝撃の味覚だ。BLTサンドやホットドッグ、ドーナッツやパンケーキだけじゃない、アメリカ料理の今を、メトロ直結のサスティナブルレストランで…。
The Burn
東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1F
TEL:03-6812-9390
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